長久手の家
【雁行の連なりが生み出す間の居場所】
敷地は、長久手市に新しく造られる分譲住宅地。施主は、元々この地に住んでいた夫婦であるが、区画整理による立ち退きにより思いがけず、終の棲家としての住宅をつくる事となった。当初の施主の要望は、外に閉じ内側に開く中庭のある家であること、もう一つは、老いたときの為に 1 階で生活が完結できる家であった。しかし、敷地の南側の小川沿いに、道路から 1 段下がった緑道の計画があることや、東側は将来公園となる土地であることからも外に閉じた中庭プランよりも、敷地の特徴を活かし公園と緑道の緑を借景としながら、建物の配置方法や雁行プランとすることで住まい手が閉じたり開いたりをフレキシブルに選べる提案とした。
この家の玄関ホールは、グランドピアノを置いたパブリックの場として位置付けている。開放的な玄関ホールの前にはアプローチゲートを設け、心理的な緩衝帯となっている。生活空間を1階に集中させ、2階部分は帰省する子供の部屋を配置するだけとし、プラスα眺望を楽しめる場とした。敷地に対して58°角度を振って、建物を真南に正対させると、川や緑に向き合い、陽当りの良さや開きたい方向と一致し、入り口のパブリックな居場所から順にプライベートな居場所へと組み立てた。
雁行させることにより、隙間から視線の抜けが生まれ外部と内部を緩やかに繋げている。また、内部空間は各室の独立性は保ちつつも、斜めに繋がることで圧迫感のない奥行き感のある居住空間となり、居場所の多様性を作り出している。
また、2×8材の垂木が落ち着きと規則性を与え、内部と外部が絡まりながら視線を外へとつなげていく。
庭には築山を設け、パブリックな空間と外部はレベル差で視線を回避し、外部を遮断することなく適度な距離感を保っている。
終の棲家では、景色を受け止めながら、生活のリズムに応じてお気に入りの居場所を楽しみながら暮らしていってほしいと願って
いる。
2017-11-28